企業買収に際して対象会社のデューデリジェンスを行った事例
事案の概要
当事務所の依頼者である株式会社Xは、東京証券取引所のスタンダード市場に上場する上場会社ですが、事業拡大を図るため、積極的にM&Aに取り組んでいます。今回、M&Aの仲介会社からの紹介で、東京都に所在する非上場会社Y社(ソフトウェアの開発会社)の買収を行うことになりました。株式会社Xは、対象会社が有している法的リスクを判断するため、専門の弁護士による法務監査(デューデリジェンス)を行う必要があると考えていました。株式会社Xの代表者は、知り合いからの紹介により栗林総合法律事務所を知ることになり、当事務所に対してデューデリジェンスを行うよう依頼してきました。
デューデリジェンスのポイント
法務デューデリジェンスとは、買い手企業が買収先(対象会社)の事業内容を法律上の観点から精査し、リスクの有無を洗い出す作業になります。株式の売主(譲渡人)は株式の発行会社(対象会社)の状況についてよく知っていますが、会社の株式を取得しようとする外部の第三者(譲受人)にとっては、公開情報からのみでは、会社の状態を正確に把握することができず、買収後に大きなリスクを抱えてしまう可能性があります。そこで、M&Aによる企業買収を行う前に、法律の専門家である弁護士により対象会社の内容を調査してもらい、万一問題点がある場合は、買収前に問題点を解消するよう求めることになります。また、ケースによっては、株式譲渡のクロージングまでの期間に対象会社の法的問題点の解消を図ることが困難な場合もあります。このような場合には、譲受会社としては、自らが法的リスクを抱え込むことになりますので、その分を買収価格から減額するなどの調整が必要となります。このように法務監査(デューデリジェンス)は株式譲渡契約書(SPA)の締結前に行う必要があり、その結果については、買収金額や株式譲渡契約書の契約条項に反映していく必要があります。
栗林総合法律事務所による作業の結果
栗林総合法律事務所において法務デューデリジェンスを行ったところ、対象会社においてはいくつかの法的問題点があることが判明しました。第1に、これまで対象会社の主要株主が何度か変更になっている関係から、10年以上前になると株式譲渡の経過が正確に把握できない状態になっていました。従って、現在の株主名簿に記載されている株主が本当に正当に権利を取得した株主であるかどうかを判断しえないリスクが存在していることになります。この点については、株式譲渡契約書の保証表明条項に記載し、万一株式譲渡が無効となったり、株式を所有していると主張する第三者が現れた場合には、株式の譲渡人において責任を持って解決するか、それによって株式の譲受人が被ることになる損害について売主が補償することが定められることになりました。また、第2の問題点として、対象会社が扱っている主要なサービスについて商標の登録がなされていないことが判明しました。もし将来第三者が同一名称の商標を先に出願し、その第三者から商標侵害を主張された場合、訴訟において敗訴してしまう可能性も否定できません。そこで、当法律事務所から商標登録がなされていないことを指摘したところ、対象会社において自発的に商標の出願申請を行うことになりました。栗林総合法律事務所の報告書は法務監査報告書として依頼者(株式の譲受会社)に提出しています。株式の譲受会社は、栗林総合法律事務所から提出を受けた法務監査報告書をもとに、全ての問題点についてつぶしていく作業(保証表明条項などによってリスクをヘッジするか、買収価格を減額するか、瑕疵のある部分についてクロージング前に修正を行ってもらう)を行っています。
栗林総合法律事務所のサービス内容
栗林総合法律事務所では、国内案件や国際案件を含め、これまで多くのM&A案件を扱ってきました。栗林総合法律事務所では、M&Aにおけるスキームの立案、株価の算定、価格交渉、インフォーメーションパッケージの作成、デューデリジェンスのサポート、スケジュール表の作成、会社法上求められる各種の手続きのサポートを行います。特に、栗林総合法律事務所では、対象会社の法務デューデリジェンスを行い、対象会社の買収に問題がないかどうかについて分析した結果を法務監査報告書として依頼者(株式の譲受会社)に提出してきました。法務監査報告書の作成については日本語でも英語でも対応いたします。栗林総合法律事務所では、大企業のM&Aだけでなく、中堅・中小規模の会社のM&A案件も多く扱っています。事業価格が数百万円から数千万円というM&A案件も多くあります。栗林総合法律事務所がこれまで培った経験をもとに皆様の企業をサポートさせていただきます。M&Aを検討されている皆様は是非栗林総合法律事務所にご相談ください。