シンガポールの会社との間の英文秘密保持契約書を作成した事例
事案の概要
当事務所の顧問先がシンガポールの会社との間において商品の売買取引を開始するに際し、シンガポールの会社から秘密保持契約書の提示がありました。シンガポールの会社から提示された英文秘密保持契約書では、裁判管轄がシンガポールとされており、また秘密保持期間が永久とされていました。当事務所の顧問先としては、そのような契約条項を受ける場合のリスクについて知っておきたいとのことで当事務所に問い合わせをしてこられました。
英文秘密保持契約書のポイント
秘密保持契約書においては、契約期間が定められる場合が多くあります。契約が終了すると同時に秘密保持条項についても効力が失われる場合、当事者の意図に反して秘密保持義務が消滅してしまうことになる可能性があります。そこで、秘密保持義務については、秘密保持契約書の契約期間が終了した後もその効力が残存することを定めるのが通常です。但し、その場合でも永久に秘密保持義務が存続するとすると、書類の管理などにおいて負担が著しく増大してしまうことになります。そこで秘密保持義務の期間については、開示される情報の秘密性なども考慮しながら、当該事案にふさわしい期間を定めることが重要となります。また、国際的な契約書においては、いずれの当事者も自分の国の裁判管轄を独占的裁判管轄にしたいと考えますので、裁判管轄についての合意を得るのが難しくなるケースも生じてきます。
栗林総合法律事務所における作業の結果
英文秘密保持契約書の期間が5年と定められている場合に、契約期間満了と同時に秘密保持義務の効力も消滅してしまうとすると、依頼者の秘密が外部に漏れてしまう可能性があり、重大な損害を被ってしまう恐れがあります。そこで、秘密保持契約書の効力が消滅した場合でも、サバイバル条項により、相手方から受領した秘密を保持する義務については、効力が存在することとしました。一方で依頼者からは、秘密保持義務が永久に続く場合、秘密保持契約書を永久保存文書として永久に管理しなければならなくなるなど、会社の運営上大きな支障が生じかねないとの懸念が示されました。そこで、秘密保持義務については、サバイバル条項により、秘密保持契約書の期間が満了したり、秘密保持契約書が解除された場合でも、その効力が存続するとしながら、一方で、秘密保持義務については情報が開示された後10年間有効であることを明確にしました。なお、日本とシンガポールとの間では、外国判決の相互承認に関する相互主義が取られていませんので、日本の判決をシンガポールで執行することはできません。そこで、仮に日本で損害賠償の裁判を起こし勝訴判決を取ったとしても、シンガポールで裁判を再度提起しなければならないことや、相手方当事者にとっても、シンガポールで取得した勝訴判決を日本で執行することができないことを説明しました。その結果、裁判管轄については、被告の所在地の裁判所を管轄裁判所とすることを契約書に書き込むことで両当事者の了解を得ることができました。
栗林総合法律事務所のサービス内容
栗林総合法律事務所では、これまで非常に多くの英文秘密保持契約書の作成やレビュー、翻訳、契約交渉のサポートを行ってきています。このような契約書の中には次のようなものが含まれます。
・双務的英文秘密保持契約書
・片務的英文秘密保持契約書
・レター形式の英文秘密保持契約書
・従業員との間の英文秘密保持契約書
・コンサルタントとの間の英文秘密保持契約書
秘密保持契約書の内容は全て同一ではなく、依頼者の要望に応じて契約内容を修正(カスタマイズ)していく必要があります。栗林総合法律事務所では、依頼者からのヒアリングを通じて依頼者の要望を把握し、依頼者の希望する内容の秘密保持契約書を作成します。これらの条項には、秘密情報の定義、情報の管理方法、廃棄証明書の提出要求、謄写制限、契約期間、残存条項(サバイバル条項)、準拠法、紛争解決方法などが含まれます。