英文ソフトウェア開発契約書の作成のポイント
- 1 英文ソフトウェア開発契約書の無料サンプルの提供
- 2 ソフトウェア開発契約とは
- 3 英文ソフトウェア開発契約の事例
- 4 英文ソフトウェア開発契約書のメリット
- 5 英文ソフトウェア開発契約の性質
- 6 開発契約が途中で終了した場合の処理
- 7 英文ソフトウェア開発契約書の前文
- 8 英文ソフトウェア開発契約書のWhereas条項
- 9 英文ソフトウェア開発契約における開発者への委託
- 10 英文ソフトウェア開発契約における開発者の義務および責任
- 11 英文ソフトウェア開発契約における仕様変更
- 12 英文ソフトウェア開発契約におけるソフトウェアの納品
- 13 顧客による検品
- 14 英文ソフトウェア開発契約における代金の支払い
- 15 英文ソフトウェア開発契約における保証
- 16 英文ソフトウェア開発契約における著作権
- 17 英文ソフトウェア開発契約における関係
- 18 英文ソフトウェア開発契約における秘密保持義務
- 19 英文ソフトウェア開発契約の契約期間
- 20 英文ソフトウェア開発契約における贈収賄の禁止
- 21 英文ソフトウェア開発契約における不可抗力
- 22 英文ソフトウェア開発契約における譲渡禁止
- 23 英文ソフトウェア開発契約における準拠法
- 24 英文ソフトウェア開発契約における紛争解決条項
- 25 英文ソフトウェア開発契約における副本の作成
- 26 英文ソフトウェア開発契約の修正
- 27 英文ソフトウェア開発契約における権利放棄
- 28 英文ソフトウェア開発契約における通知
- 29 英文ソフトウェア開発契約における完全条項
- 30 英文ソフトウェア開発契約における署名欄
英文ソフトウェア開発契約書の無料サンプルの提供
当事務所では、英文ソフトウェア開発契約書の無料サンプルを提供しております。英文ソフトウェア開発契約書の作成を検討されている方は、是非ご覧ください。
ソフトウェア開発契約とは
ソフトウェア開発契約書とは、委託者である顧客が、受託者である開発業者に対して、ソフトウェアの開発業務を行うことを委託し、受託者である開発業者が、委託者である顧客のニーズに合わせてソフトウェアの開発を行うことを約する契約です。受託者が開発業務を行い、それに対する対価の支払いがなされることから、請負契約の一種と考えられます。
英文ソフトウェア開発契約の事例
英文ソフトウェア開発契約は、外国企業からの委託を受けて日本の開発会社がゲームソフトや携帯電話向けのアプリケーションソフトを開発する場合が典型的なものと思われます。反対に日本企業が海外の会社に対してソフトウェアの開発を委託することもあります。近年では、DXの一環として委託者の社内管理システムの開発やサイバーセキュリティ関連の商品の開発委託がなされることも多くあります。
英文ソフトウェア開発契約書のメリット
英文ソフトウェア開発契約を締結する場合は、海外の企業との間においてソフトウェアの開発を委託することができますので、日本国内には存在しない技術者の能力を利用してソフトウェアの開発を行うことが可能となります。また、最近では、タイやベトナム、インドネシア等、労賃の安い国でソフトウェアの開発を行うことも多く行われるようになりました。
英文ソフトウェア開発契約の性質
ソフトウェア開発契約は、日本法上は民法において定める請負契約に該当することが多いと思われます。従って日本の法律が適用になる場合は請負契約に関する規定が適用されることになります。従前の民法では、請負契約における工事が完了するまでは、請負人は工事代金の支払請求権を有しないとされていましたが、平成29年の民法改正により一定の範囲で請負代金の支払いがなされることが原則となりました。
開発契約が途中で終了した場合の処理
注文者の責めに帰すことができない事由(当事者双方の責めに帰することができない事由によって履行不能となった場合、または請負人の責めに帰すべき事由によって履行不能となった場合)によって仕事を完成することができなくなった場合は、請負人は注文者が受ける利益の割合に応じて報酬を請求することができるとされています(民法634条)。反対に、注文者の責めに帰する事由により請負工事ができなくなった場合は、民法536条2項の解釈により、請負人は工事代金の全額を請求することができるとされています。これらは任意規定ですので、当事者がこれらと異なる合意をした場合には、当事者の合意が優先されることになります。
英文ソフトウェア開発契約書の前文
英文ソフトウェア開発契約書の前文では、いつだれとだれの間でソフトウェア開発契約が締結されたかを端的に記載する必要があります。
(サンプル)
This Software Development Agreement (“Agreement”) is made and entered into upon August 31, 2022 (“Effective Date”) by and between XXX Corporation, a company duly organized and existing under the laws of Japan, having its principal office of business at ● (“Developer”) and YYY company, a company duly organized and existing under the laws of California, United States, having its principal place of business at ● (“Client”).
(訳)本ソフトウェア開発契約(以下「本契約」という。)は、2022年8月31日(以下「発効日」という。)、日本法に基づいて正式に組織・設立され、●に主たる営業所を有するXXX株式会社(以下「開発者」という。)と、カリフォルニア州法に基づいて正式に組織・設立され、●に主たる営業所を有するYYY社(以下「顧客」という。)との間で締結された。
英文ソフトウェア開発契約書のWhereas条項
Whereas条項とは、当事者間で契約締結に至った経緯や、契約の全体像を端的に記載する契約条項です。Whereas条項自体は法的拘束力のある契約条項とはなりませんが、契約条項の解釈の指針として用いられることになります。
(サンプル)
WHEREAS, Developer is engaged in the business of design and development of the software and related materials to be used in web and mobile applications;
WHEREAS. Client wishes to engage Developer and Developer agrees to be engaged by Client to develop the software customized specifically for Client (“Software”);
NOW, THEREFORE, in consideration of the promises, rights and obligations set forth below, the parties hereby agree as follows:
(訳)開発者は、ウェブアプリケーションおよびモバイルアプリケーションで使用するソフトウェアおよび関連素材の設計・開発事業を営んでいる。
顧客は開発者と契約することを希望し、開発者は顧客のために特別にカスタマイズされたソフトウェア(以下「本ソフトウェア」という。)を開発するために顧客と契約することに同意している。
そこで、以下に定める約束、権利、義務を約因として、両当事者は以下の通り合意する。
英文ソフトウェア開発契約における開発者への委託
顧客が開発者に対してソフトウェアの開発業務を委託し、開発者がこれを受託することに合意した旨を端的に記載します。ソフトウェア開発契約の骨格となる部分ですので、どのような開発業務を委託したのかなどをできるだけ明確に記載する必要があります。
(サンプル)
Subject to the terms and conditions hereof, Client shall retain the services of Developer to design, develop, and implement the Software (the “Work”) in accordance with the specifications attached hereto as Exhibit A (“Specification”).
(訳)顧客は、開発者に対し、本契約の条件に従い、別紙A(以下「仕様書」という。)に従って本ソフトウェアの設計、開発および実装(以下「作業」という。)を行うサービスを委託する。
英文ソフトウェア開発契約における開発者の義務および責任
開発業務における注意義務のレベルや、下請を利用することができるかどうかなど、開発者がどのようにして開発業務を行うのか(開発者の義務と責任)を記載します。
(サンプル)
Developer will utilize its employees and/or outside contractors capable of designing and implementing the Software to be developed hereunder. All work shall be performed in a professional and workmanlike manner.
(訳)開発者は、本契約に基づき開発される本ソフトウェアの設計および実装を行うことができる従業員および/または外部委託業者を利用するものとする。すべての作業は、専門的かつ職人的な方法で行われるものとする。
英文ソフトウェア開発契約における仕様変更
ソフトウェア開発契約において一番問題となるのは、契約途中において仕様の変更が生じた場合に、報酬や納期などの契約条件をどのように変更するかについてです。仕様変更について明確な合意がなされていない場合には、完成品が委託者の希望に沿っていないなどとして紛争となることが多くあります。
(サンプル)
In the event Client wishes to make any modification or the change to the Specification, Client must provide a detailed proposal to Developer in writing specifying the desired modifications or changes. Client and Developer shall sincerely consult each other as to the modifications or changes on the Specifications requested by Client and necessary amendment on this Agreement.
(訳)顧客は、本仕様書の修正または変更を希望する場合、開発者に対し、希望する修正または変更内容を明記した詳細な提案書を提出しなければならない。顧客と開発者は、顧客が希望する仕様の修正・変更および本契約の変更について、相互に誠実に協議するものとする。
英文ソフトウェア開発契約におけるソフトウェアの納品
ソフトウェアの開発契約において、納期は契約の重要な一部になりますので、納期の記載もきちんと行っておくことが重要です。
(サンプル)
Developer shall complete the development of the Software and deliver the Software according to the time schedule attached hereto as Exhibit B.
(訳)開発者は、別紙Bに記載したスケジュールに従い、本ソフトウェアの開発を完了し、本ソフトウェアを納品するものとする。
顧客による検品
検品をどのように行うかはソフトウェア開発契約における重要な内容となります。検品を通過して初めて請負代金の支払い請求権が発生すると定められることは多いと思われます。ソフトウェアが設計上求められていた動作をしない場合など、品質に不具合がある場合の修補請求権との関係も明確にしておく必要があります。
(サンプル)
- Client shall inspect the Software within ten (10) days from the date of delivery of the Software (“Delivery Date”).
- If the Software as delivered does not conform with the Specification, Client shall within ten (10) days from the Delivery Date notify Developer in writing of the ways on which it does not conform with the Specification. Upon receiving such notice, Developer shall make reasonable efforts to correct any non-conformity.
- If Client does not notify Developer of the inspection results after ten (10) days from the Delivery Date, the Software shall be deemed to have passed the inspection prescribed in the first paragraph hereof.
(訳)
- 顧客は、本ソフトウェアの納品日(以下「納品日」という。)から10日以内に本ソフトウェアを検査するものとする。
- 納品された本ソフトウェアが仕様に適合しない場合、顧客は納品日から10日以内に、仕様に適合しない点を開発者に書面で通知しなければならない。開発者は、その通知を受けた後、不適合を修正するために合理的な努力をするものとする。
- 納品日から10日を経過しても、顧客から開発者に対して検査結果の通知がない場合、本ソフトウェアは第1項の検査に合格したものとみなされる。
英文ソフトウェア開発契約における代金の支払い
ソフトウェアの開発委託契約における代金の支払いに関する契約内容は契約の骨格を構成するものです。多くの事例では、ソフトウェアが完成して引渡しがなされた後に代金の支払いがなされるものと思われますが、契約時に一時金が支払われたり、開発途中で進捗度合いに応じて中間金が支払われたりする事例もあります。国際契約においては、どこの国の通貨により支払うのか、また海外送金の方法をどのようにするのかについても定めておく必要があります。消費税や付加価値税(VAT)が課されるのかどうかも注意が必要です。
(サンプル)
In consideration for the development of the Software, Client shall pay Developer the sum of JPY 1,100,000 including consumption tax, and all other costs and expenses relating to the development of the Software.
(訳)顧客は、本ソフトウェアの開発の対価として、消費税込みで110万円、その他本ソフトウェアの開発に関する一切の費用および経費を開発者に支払うものとする。
英文ソフトウェア開発契約における保証
開発したソフトウェアに不具合がある場合に、開発者がどのような責任を負うのかを定めておく必要があります。日本の民法では、瑕疵担保責任から契約不適合責任に変更され、損害賠償や契約解除の他、目的物の補修や代替物の引渡しも認められるようになりました。開発者がどのような保証責任を負うのかを定めておきます。また、開発者の責任期間が極端に長期になってしまわないよう品質保証の期間を定めておくのが通常です。
(サンプル)
- Developer warrants that for the period of one (1) year from the Delivery Date, the Software will operate substantially according to the Specification. In the event of any breach of the warranty in this paragraph, in addition to any other remedy to which Client may be entitled, Developer shall take all action necessary at its expense to cause the Software to operate according to the warranty.
- Developer warrants that the Software will not infringe upon any copyright, patent, trade secret or other intellectual property interest of any third party. Developer will indemnify and hold Client harmless from and against all such infringement claims, losses, suits and damages including, but not limited to, attorney’s fees and costs, and shall immediately correct the Software so as not to be infringing, or secure the right of Client to use the Software without infringement.
(訳)
- 開発者は、納品日から1年間、本ソフトウェアが実質的に仕様書に従って動作することを保証する。本項の保証に違反した場合、顧客が受けることができる他の救済措置に加えて、開発者は、その費用で、本ソフトウェアが保証に従って動作するために必要なすべての措置を講じるものとする。
- 開発者は、本ソフトウェアが第三者の著作権、特許権、企業秘密、その他の知的財産権を侵害しないことを保証する。開発者は、そのような侵害の主張、損失、訴訟および弁護士費用を含むがこれに限定されない損害から顧客を免責し、侵害とならないように本ソフトウェアを直ちに修正し、または顧客が知的財産権の侵害なく本ソフトウェアを使用する権利を確保するものとする。
英文ソフトウェア開発契約における著作権
開発されたソフトウェアのプログラムについては著作権という権利が発生し、著作権法によって権利が保護されることになります。英文ソフトウェア開発契約書では、委託者である顧客の希望に応じてソフトウェアの開発がなされて委託者に引き渡されることになりますので、制作されたソフトウェアの著作権は開発者に帰属するとされるのが通常と思われます。
(サンプル)
All copyrights to the software, programs, and other deliverables included in the Software shall belong to Client, and Developer shall not exercise moral rights of authorship.
(訳)本ソフトウェアに含まれるソフトウェア、プログラム、その他の成果物に関する著作権は、すべて顧客に帰属し、開発者は著作者人格権を行使しないものとする。
英文ソフトウェア開発契約における関係
委託者である顧客と受託者であるソフトウェア開発業者との関係は雇用契約ではなく、雇い主と従業員という関係が構築されるものではありませんので、労働法に関する規定が適用されるものではありません。またそれぞれが独立した当事者間の契約であり、民法上の組合契約に該当するものでもありませんので、パートナーシップ契約における信任関係などが発生するものではありません。
(サンプル)
Developer is acting as an independent contractor with respect to the services provided hereunder. Neither Developer not the employees of Developer performing services for Client will be considered employees or agents of Client.
(訳)開発者は、本契約に基づくサービスに関して独立した請負業者として行動している。開発者及び開発者の従業員は、顧客の従業員又は代理人とはみなされない。
英文ソフトウェア開発契約における秘密保持義務
ソフトウェア開発契約においては、委託者が受託者に対してソフトウェアの仕様や開発の手順などを示して開発を委託することになりますので、ソフトウェアの開発に関するノウハウや秘密情報が委託者から受託者に対して開示されることになります。もし受託者が、委託者から開示を受けたノウハウや秘密情報を用いて委託者の競争相手(コンペティター)に対して類似のソフトウェアを開発販売する場合は、委託者は重大な損害を蒙ることになります。そこで、ソフトウェア開発契約の履行の過程で開示された秘密情報については厳格に秘密として保持し、他の目的のために使用しないことなどを明確にしておく必要があります。
(サンプル)
The party hereof shall keep strictly confidence and shall not disclose technical information or any other confidential information received from the other party (the “Disclosing Party”) to any third party without the prior written consent of the Disclosing Party except to the specified person or entity who need to know the same for the development of the Software. The party receiving technical information or any other confidential information (the “Receiving Party”) shall use the same only for the purpose of manufacturing and selling Products under this Agreement, and shall not use the same for any other purpose. This article shall not apply to the followings:
(a) Information which at the time of disclosure is in the public domain;
(b) Information which, after disclosure, becomes part of the public domain, by publication or otherwise other than through unauthorized disclosures by the Receiving Party;
(c) Information which at the time of disclosure is already in the Receiving Party’s possession as shown by its written records;
(d) Information which is made available to the Receiving Party by an independent third party who does not owe any confidential obligation;
(e) Information which is requested to be disclosed by a court order.
(訳)本契約の当事者は、相手方(以下「開示当事者」という。)から受領した技術情報その他の機密情報を厳重に保管し、本ソフトウェアの開発に必要な特定の個人または団体を除いて、開示当事者の事前の書面による同意なしに第三者に開示しないものとする。技術情報その他の秘密情報を受領した者(以下「受領当時者」という。)は、これを本契約に基づく本製品の製造および販売の目的にのみ使用し、他の目的に使用してはならないものとする。本条は、次の各号に該当するものには適用されないものとする。
(a) 開示の時点で公知である情報
(b) 開示後、受領当事者による不正な開示以外に、出版等により公知となった情報
(c) 開示の時点で、文書による記録によって示されるように、受領当事者が既に所有している情報
(d) 秘密保持義務を負わない独立した第三者によって受領当事者に提供された情報
(e) 裁判所の命令により開示が要求された情報
英文ソフトウェア開発契約の契約期間
ソフトウェア開発契約においても、契約の有効期間がいつから開始し、いつ契約が終了するのかを明確にしておく必要があります。また、契約期間が満了した場合には、契約の更新があるのかどうか、契約の更新は自動更新か、当事者の合意がある場合にのみ契約が更新されるのか等を明確にしておきます。
(サンプル)
This Agreement shall commence on the Effective Date and shall continue to and through September 30, 2022, unless renewed by further agreement in writing between the Parties.
(訳)本契約は、両当事者の書面による更なる合意により更新されない限り、発効日から2022年9月30日まで存続するものとする。
英文ソフトウェア開発契約における贈収賄の禁止
ソフトウェア開発委託契約の過程で国家公務員などに対する贈収賄行為が行われる場合には、委託先が行った行為であっても、委託者と受託者の両方が刑事法で処罰されてしまう可能性があります。アメリカではFCPAという法律があり、イギリスではBribery Actという法律で禁止されます。日本の場合は不正競争防止法によって禁止されることになります。
(サンプル)
Either of the Parties hereto shall not, and shall cause its employee, agents, consultants or subcontractors or their employees, agents or consultants not to (a) use any funds for unlawful contributions, gifts or entertainment or for other unlawful expenses or (b) make any unlawful payment to foreign or domestic government officials or employees or to foreign or domestic political parties or campaigns, whether or not such contributions, gifts, or entertainment, expenses or payments are facilitation payments.
(訳)本契約のいずれの当事者も、 (a)資金を違法な寄付、贈答若しくは接待又はその他の違法な支出に使用し、又は(b)外国若しくは国内の政府官吏若しくは職員又は外国若しくは国内の政党若しくは運動員に対し、これらの支払いが業務の円滑化を図るものであるかどうかにかかわらず、かかる違法な寄付、贈答若しくは接待、支出若しくは支払をせず、その従業員、代理人、コンサルタント若しくは下請業者又はそれらの従業員、代理人若しくはコンサルタントに対してもそのようにさせるものとする。
英文ソフトウェア開発契約における不可抗力
ソフトウェア開発契約における不可抗力の規定も通常の場合と異なりません。近時の大震災やパンデミックを考えた場合、不可抗力事由が生じる可能性も十分にあり得ると思われます。不可抗力の規定の仕方により、不可抗力事由が生じた場合に、当事者は債務の履行を免れるのか、あるいは履行の完了時期が延期されるだけで債務の履行責任が免除されるわけではないのかなどの違いが生じてくる可能性があります。
(サンプル)
Neither party shall be liable to the other for any delay or failure in the performance of its obligations under this Agreement if and to the extent such delay or failure in performance arises from any cause or causes beyond the reasonable control of the party affected (“Force Majeure”), including without limitation, act of God, acts of government or governmental authorities, compliance with law, regulations or orders, fire, storm, flood or earthquake, war, rebellion, revolution, acts of terrorism or riots, epidemics, strike or lockouts.
(訳)いずれの当事者も、本契約に基づく義務の遅滞又は不履行が、天災地変、政府または政府当局の行為、法律、規制または命令の遵守、火災、嵐、洪水または地震、戦争、反乱、革命、テロ行為または暴動、疫病、ストライキまたはロックアウトを含むがこれらに限らず、影響を受けた当事者の合理的支配を超える何らかの原因(以下「不可抗力」という。)によって生じた場合およびその程度に応じて、他方に対して責任を負わないものとする。
英文ソフトウェア開発契約における譲渡禁止
ソフトウェア開発契約は、相手方当事者の信用力やソフトウェアの開発能力などを信頼して契約を締結するものですので、相手方当事者が一方的に契約上の地位や、契約に基づく権利義務を第三者に譲渡した場合には、当事者が損害を蒙る可能性があります。そこで、相手方当事者の同意なしに契約上の地位や、ソフトウェア契約書に基づいて生じた権利義務を移転することはできないとするのが一般的です。契約上の地位の譲渡禁止規定は、相手方当事者の同意なしに株主等会社支配者の変更ができないとするチェンジ・オブ・コントロール(Change of Control)条項として働く場合があります。
(サンプル)
Neither party may assign any of its rights or obligations under this Agreement to any third party without the prior written consent of the other party.
(訳)いずれの当事者も、相手方の書面による事前の同意なく、本契約に基づくいかなる権利または義務も第三者に譲渡することはできない。
英文ソフトウェア開発契約における準拠法
英文ソフトウェア開発契約は、当事者間の国籍を異にする国際的ソフトウェア開発契約として利用されるのが通常だと思われますので、いずれの当事者の国の法律が適用になるのか(準拠法)を明確にしておく必要があります。
(サンプル)
This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of Japan.
(訳)本契約は日本法に準拠し、これに基づいて解釈されるものとする。
英文ソフトウェア開発契約における紛争解決条項
英文ソフトウェア開発契約は、当事者間の国籍を異にする国際的ソフトウェア開発契約として利用されるのが通常ですので、当事者間に紛争が生じた場合に、いずれの国の紛争解決機関を用いて紛争の解決を行うのかを決めておく必要があります。また、紛争解決機関としても、裁判所による紛争解決を図るのか、仲裁手続きで解決するのかなどを定めておくのが通常です。
(サンプル)
All disputes, controversies, or differences which may arise between the parties, out of or in relation to or in connection with this Agreement shall be finally settled by arbitration in Tokyo, Japan in accordance with the Commercial Arbitration Rules of the Japan Commercial Arbitration Association. The award shall be final and binding upon both parties.
(訳)本本契約に起因または関連して両当事者の間に生じたすべての紛争、論争または相違は、日本商事仲裁協会の商事仲裁規則に従い、東京において仲裁により最終的に解決されるものとする。その裁定は、最終的なものであり、両当事者を拘束するものとする。
英文ソフトウェア開発契約における副本の作成
ソフトウェア開発契約書は、各当事者が署名して相手方当事者に原本を送付して管理してもらうものですので、複数の原本が作成されることになります。この場合、いずれの原本も有効な原本となります。最近では、各当事者が署名したPDFを相手方当事者にeメールで送付し、各当事者は相手方当事者から送付されてきたPDFのみを保管する場合が多いと思われますが、これらのPDFであっても契約書としては有効に成立したことの証拠となります。
(サンプル)
This Agreement may be executed simultaneously in multiple counterparts, each of which shall be deemed an original and all of which when taken together shall be deemed to be one and the same agreement. In the event that this Agreement is executed in both the English and Japanese language, the English text shall govern in the event of any discrepancies.
(訳)本契約は、複数の副本によって同時に締結することができ、各副本は原本とみなされ、それらをすべて合わせると同一の契約とみなされるものとする。本契約が英語と日本語の両方で締結された場合、不一致が生じた場合には、英語の文章が適用されるものとする。
英文ソフトウェア開発契約の修正
英文ソフトウェア開発契約書の修正に関する条項です。口頭による契約の修正は認められず、契約条項の修正を行う場合には必ず文書によって行う必要があることを明確化しています。
(サンプル)
This Agreement may not be amended except by an instrument in writing signed on behalf of all of parties herein.
(訳)本契約は、本契約のすべての当事者を代表して署名された書面によってのみ、変更することができる。
英文ソフトウェア開発契約における権利放棄
権利放棄に関する一般的な記載内容です。当事者が権利の放棄をしたり、権利の救済手段を講じたりしなかったとしても、その他の救済手段やその後の債務不履行に対する救済手段の行使を制限されるものではありません。
(サンプル)
No waiver of any term of conditions of this Agreement shall be deemed to be a further or continuing waiver of that terms or conditions or a waiver of any other terms or conditions.
(訳)本契約のいかなる条項の権利放棄も、当該条項の追加的もしくは継続的な権利放棄またはその他の条項の権利放棄とはみなされないものとする。
英文ソフトウェア開発契約における通知
英文ソフトウェア開発契約書は、国際間のソフトウェア開発契約に関して作成されるものですので、相手方当事者に対する通知(意思表示)をどのような方法により行うのかを明確にしておく必要があります。最近はeメールによる通知も多くなっていますが、eメールについては変造の可能性がありますので、ファックスや国際クーリエなど変造の可能性のないものでなければならないとするのが多いかと思われます。
(サンプル)
All notices and other communications shall be in writing and shall be given by registered airmail, international courier or by facsimile, or by other means providing proof of delivery to the parties at their respective office first above referred to or to any other address of which a party notifies the other in accordance with this Article.
(訳)すべての通知およびその他の連絡は書面により行い、書留郵便、国際宅配便、ファクシミリ、または配達証明を提供するその他の手段により、最初に言及した両当事者のそれぞれの事務所、または当事者が本条に従って他方に通知したその他の住所に送付するものとする。
英文ソフトウェア開発契約における完全条項
英文ソフトウェア開発契約書では、契約書に記載のある事項のみが当事者を拘束する契約内容となり、契約書に記載のない事項は、仮に口頭での合意があったとしても当事者間の合意としての効力を有しません。口頭証拠排除の原則という英米法におけるParol Evidence Rule(パロール・エヴィデンス・ルール)の内容を定めたものになります。
(サンプル)
This Agreement constitutes the entire and completer agreement between the parties concerning the subject matter of this Agreement and supersedes all prior agreements.
(訳)本契約は、本契約の主題に関する当事者間の完全かつ完結した合意を構成し、すべての従前の合意に取って代わるものとする。
英文ソフトウェア開発契約における署名欄
英文ソフトウェア開発契約書においても、各当事者が署名を行い、原本を相手方当事者に対して交付することになります。日本の契約書と異なり、押印は必要ありません。署名は署名権限を有する者が、ローマ字で名前を記載する方法で行われます。名前の全部を記載せず、イニシャルサインのみを行うこともあります。
(サンプル)
IN WITNESS WHEREOF, the parties hereto have caused this Agreement to be executed in duplicate by their duly authorized officers or representatives.
(訳)その証として、本契約の当事者は、正当に権限が与えられた役員または代理人により、本契約の複製を作成した。
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