• 2021.09.30
  • 国際取引

販売代理店契約(Distributorship Agreement)

英文販売代理店契約書の無料サンプルの提供

当事務所では、英文販売代理店契約書の無料サンプルを提供しております。英文の販売代理店契約書の作成を検討されている方は、是非ご覧ください。

英文販売代理店契約の無料サンプル

販売代理店契約(Distributorship Agreement)とは

販売店契約とは、契約の一方(サプライヤー)が他方当事者(ディストリビューター)を自己の販売店に指名し、自己の商品を販売することを了解する内容の契約です。ディストリビューターは承認された権利の範囲内においてサプライヤーの商品を販売することになります。国際取引において、相手方の国で自ら商品を販売することもありますが、自ら商品を販売する場合には、知らない土地での市場の開拓やマーケティング、法令の規制への適合などで多くの費用を要することになります。これに対して、現地の販売店を選定する場合は、その販売店が自己の商品を一生懸命販売してくれますので、多くの費用をかけずに、市場開拓を行うことができます。

販売代理店契約の特徴

販売店は、サプライヤーから商品やサービスを購入し、自らの名前で顧客に対して商品やサービスを提供していきます。顧客との売買契約やサービス提供契約の当事者は販売店と顧客ということになります。従って、販売店は、在庫の売れ残りリスク、顧客への瑕疵担保責任、品質保証責任、代金の回収リスクなどを自ら負担することになります。

エージェント契約

販売店と似たものに、代理店(エージェント)があります。エージェント契約の場合は、エージェントは顧客とサプライヤーとの間を結ぶ役割ですので、自らが契約の当事者となるわけではありません。商品の売買契約やサービスの提供契約は、サプライヤーと顧客との間に締結され、エージェントはサプライヤーから紹介手数料(コミッション)を受領することになります。

マージンの違い

このように、販売店はエージェントに比べてより多くのリスクを負っていますので、一般的にはマージンも高くなります。日本では、販売店と代理店(エージェント)の区別が明確でない場合が多くありますが、海外の取引では明確に区別されていますので、注意する必要があります。

販売代理店の指名

海外のサプライヤーが、テリトリー(領域)の範囲内の会社を販売店として指定する旨の規定です。ここでは、販売可能な地域、対象製品、独占的契約か、非独占的契約かが重要になります。独占的契約の場合は、ディストリビューター以外に対象地域(日本)で当該商品を販売できる会社はないわけですので、ディストリビューターも安心して製品の販売活動に投資をしていくことができます。これに対して非独占の契約の場合は、ディストリビューターは、日本における多くの販売店の一つということになりますので、必ずしも独占的に商品の販売ができるわけではありません。そこで、独占的販売店か、非独占的販売店かは極めて重要な違いが生じることになります。

独占と非独占の区別

最近の販売店契約では、販売地域を分割して、独占的地域と非独占的地域を分けることもあります(例えば、香港では独占であるが、中国では非独占など)。また、製品や取引先ごとに独占と非独占を決める場合もあります(例えば、A商品については独占であるが、B商品については非独占とするなど)。さらに販売店が従前有していた顧客については独占とし、その他の顧客については非独占とすることもあります(例えば、顧客X、Y、Zは独占であるが、その他は非独占)。

再販売価格の指定と独占禁止法

販売方法に制限を設けたり(例えばインターネット通販はできない)、不当廉売を禁止することができますが、再販売価格を制限することは独占禁止法に違反する可能性があります。

Subject to the terms of this Agreement, Supplier grants Distributor the Exclusive Distribution Rights for the Products in the Territory (including any improvements to said Products now or hereafter developed by Supplier), and Distributor hereby accepts such appointment (the “Appointment”).
本契約の条件に従って、サプライヤーは、ディストリビューターに対し、地域内の製品の独占的販売権を付与し(現時点で、または今後、サプライヤーが開発した製品の改良を含む)、ディストリビューターはこの指定(以下「指定」という。)を受諾する。

競合品の取り扱い制限条項(Exclusiveness)

独占的販売店契約の場合には、供給者は、当該地域内で他の販売店を指定することができないことから、供給者の利益を確保するために、指定する販売店に対して競合品の取り扱いを制限する場合が多く見られます。この点についても、例えば、販売店が従来から販売していた商品の取り扱いを制限するような場合には、独占禁止法に違反する可能性があります。

Distributor shall not, during the term of this Agreement, manufacture or distribute any products which directly or indirectly compete with the Products.
Distributor shall refrain, outside the Territory and in relation to the Products, from seeking customers and from establishing any branch or other sales organization.
Supplier shall not, during the term of this Agreement, appoint any other distributor for the Products in the Territory and shall not supply, export or sell the Products to any person other than Distributor within the Territory.
ディストリビューターは、本契約の期間中、本製品と直接的または間接的に競合する製品を製造または供給しないものとする。
ディストリビューターは、地域外で本製品に関して、顧客を探すこと、及び支店その他の販売組織を設置することを慎むものとする。
サプライヤーは、本契約の期間中、地域内で本製品のために他の販売店を指定せず、また、地域内でディストリビューター以外の者に製品を供給、輸出または販売しないものとする。

最低購入数量

独占的販売権を付与する代わりに、年度ごとの独占的最低購入数量や最低購入価格を取り決めることもあります。例えば、年間最低でも1億円の購入をすることを義務付け、最低購入数量に届かなかった場合は、非独占としたり、サプライヤーの側で契約解除できる条項が定められる場合もあります。最低購入数量に関する規定は販売店にとって極めて大きな負担となります。最低購入数量を定めざるを得ない場合であっても、最低購入数量について協議できる余地を残すなどの工夫ができないかを検討する必要があります。

The Parties shall separately agree in writing on the minimum target amount (“Minimum Target”) for Distributor to purchase the Products from Supplier during each fiscal year, which shall be reviewed and adjusted by the Parties for every fiscal year based on good-faith discussions between the Parties. If the Minimum Target for the respective year is not achieved, Distributor understands that Supplier may chose not to renew the Agreement upon the expiry thereof for the reason, provided that, for the avoidance of doubt, the renewal of the Agreement shall not be guaranteed even when the Minimum Target is achieved.
両当事者は、別途、書面により、各会計年度において販売店がサプライヤーから購入する本商品について、最低購入目標(「最低目標」という)を合意するものとし、最低目標は、会計年度ごとに、両当事者の誠意ある協議に基づき見直され、調整されるものとする。対象年度における最低目標が達成されない場合、販売店は、サプライヤーが、そのことを理由として、本契約の期間満了時において本契約を更新しないことを判断するかもしれないことを理解する。但し、誤解を避けるために述べると、最低目標が達成された場合であっても、本契約の更新が保証されるものではない。

商標と特許(Trademark、Patent)

販売店は、サプライヤーの商品やサービスを販売するわけですので、サプライヤーの商標や特許の利用ができることが不可欠となります。一方で、サプライヤーの側からすれば、自己の大切な商標を不適切に扱われ、自己のブランド価値が低下することは避けたいと考えます。そこで、多くの販売店契約書では、商標や特許の取り扱いについて具体的に定めていることが多くあります。使用できる商標などは契約書の中で具体的に記載しておくのが明確です(例えば、別紙において商標や特許の登録番号や図面などを明示するなど)。

ドメインの取得

ブランド価値の維持の観点からは、テリトリーの対象地域においてドメイン名で取得できるかどうか、日本国内での商標登録はサプライヤーとディストリビューターのいずれが行うかなども重要になってきます。販売店が当該商標を日本の会社の会社名として使用している場合も多くあります。将来何らかの事由により販売店契約が終了した場合、ドメインや会社名の使用もできなくなるのかなどが問題となります。並行輸入や非独占的販売店、2次卸しとしての活動も考える場合、販売店契約の終了が直ちに会社名やドメインの使用中止となることで問題が生じないかを考えておく必要があります。

商標の登録

販売店が商標の登録を自己の名前で行っている場合、契約終了時の商標の移転についても契約書で定めておくのが適切と考えられます。契約書に明確な規定がない場合には、契約終了時点で協議交渉し、適切な対価の支払いと交換に商標やドメインをサプライヤーに移転させるということもあります。

Use of Trademarks. Distributor shall display each of the Trademarks (logos and marks) only on behalf of and for the sole benefit of Supplier, and in such manner and on such terms as Supplier may require or allow in writing.
商標の使用。ディストリビューターは、サプライヤーに代わり、及びサプライヤーの利益のためにのみ、サプライヤーが書面で要求または許可した方法および条件で、各商標(ロゴおよびマーク)を表示するものとする。

契約期間と契約の終了(Term and Termination)

一般的には、契約期間が長いほど販売代理店にとって有利となりますので、契約改定の際には契約期間をより長い期間に延長できるかどうかを確認しておくことも考えられます。中途解約と期間満了による解約では解約事由に差があるからです。但し、最低保証数量の合意があるような場合には、短い期間を何度も更新しながら、その都度最低保証の数量や額について協議することも考えられます。日本の裁判では、長期にわたる継続的供給契約については、合理的な理由がなければ契約解除ができないとの判例があります(長期継続契約における保護)。サプライヤーの側から販売店契約の解除が主張された場合、販売店としては、この判例を主張して契約解除の無効を主張できるかどうかが重要になってきます。アメリカやカナダなどでは、販売代理店契約の解除についての制約はありませんので、契約条項通りに解釈されることになります。ヨーロッパでは、国によって販売代理店を保護する法律がありますので、そのような国では、販売代理店契約の解除について制約がなされる可能性があります。

This Agreement will commence as of the Effective Date and remain in effect for an initial period of one (1) year from the date hereof.
本契約は発効日に効力を生じ、本契約の日から1年間有効である。

This Agreement may only be renewed upon the mutual agreement of the parties, upon such terms and conditions as may be agreed upon at the time of renewal.
本契約は、更新時に合意できる条件に基づき、当事者の相互の合意によってのみ更新することができる。

Notwithstanding anything contained herein to the contrary, either Party shall have the right to terminate this Agreement in its entirety at any time in its sole discretion by giving one hundred and eighty (180) days’ written notice.
本契約にこれと異なる定めがあっても、各当事者は、180日以内に書面による通知を行うことにより、いつでも単独で本契約全体を終了する権利を有するものとする。

注文と価格(Order and Price)

販売店契約がある場合であっても、個々の商品の売買については、個別に売買契約が必要になります。売買契約の基本的条項を定めることが必要になってきますが、別の売買契約書を作成すると、販売店契約書との間に矛盾が生じたりすることがありますので、売買契約の基本的条項は販売店契約の中に組み込むほうが便利といえます。ここでは、売買契約の各条項をそのまま契約書に組み込む形にしていますが、Basic Terms and Conditionという形で販売店契約の別紙の形にすることも多くあります。販売店契約に売買契約の基本条項を詳細に規定すると契約書の条項が長くなりすぎるという難点がありますし、売買契約の取引内容が変更するたびに、販売店契約書の改定を行わなければならないという不都合も生じてきます。売買の基本条項は別途作成する売買契約書に委ねるか、Basic Terms and Conditionとして販売店契約書の別紙の中に記載することが簡明と考えられます。
なお、仕入価格がいくらになるかは、販売店にとっては極めて重要となります。多くの販売店契約書では、サプライヤーが有するプライスリストから一定の割合でのディスカウントを認めるという形になっています。例えば、上代(市場価格)1万円の商品を30%ディスカウントした7000円で納品すると定められている場合、ディストリビューターにとっては仕入れ原価は7000円ということにあります。独占禁止法上再販売価格の指定は認められませんので、ディストリビューターは、エンドユーザーやサブディストリビューターに対して、自らの判断により、いくらで販売するかを決定する必要があります。一般的な市場価格である1万円で販売する場合、販売店(ディストリビューター)は仕入れ価格との差額である3000円の中で、販管費を賄い、利益を出していかなければならないことになります。また、商品を売りやすくするために1万円以下の販売価格で販売する場合、販管費と利益に割り当てられるべき3000円の範囲はより少なくなってしまうことになります。

ディスカウント率の検討

このように販売店の収益に対して仕入原価(ディスカウント率)は極めて大きな影響を与えることになります。仕入原価の設定については、マーケットアプローチ(市場調査を行うことで、いくらであればどの程度販売できるかを明らかにし、その販売価格から様々な費用を控除して利益が残るかどうかを検証する方法)、コストアプローチ(仕入原価に販売管理費などの費用を追加することで、最低限いくら以上で販売すれば利益が残るのかを検証する方法)の双方から慎重な検証を繰り返し行っていく必要があると言えます。また、従前は仕入れ価格を一定のマージン率で割ることで販売価格を決定することが多くありましたが(例えば1000円で仕入れた商品については、原価を7割とする場合、1000円を0.7で割り、1428円を販売価格とする方法)、現在の厳しい市場環境に照らした場合は、販売者が決めた価格で必ずしも販売できるとは限られないので、やはりマーケットアプローチは必要であると考えられます。

Distributor may from time to time place orders with Supplier. Any individual purchase order placed by Distributor shall not be binding upon Supplier until accepted by Supplier. Such acceptance shall constitute Supplier’s commitment to sell the Products on the terms set forth in the purchase order.
ディストリビューターは、サプライヤーに随時注文することができる。ディストリビューターが発注した個々の発注書は、サプライヤーが受諾するまでサプライヤーを拘束しないものとする。 当該受諾は、発注書に記載された条件で製品を販売するというサプライヤーの義務を構成するものとする。

Upon shipment of the Products, Supplier shall submit its invoice to Distributor who shall pay in US Doller the invoiced amount accrued during each calendar month to a bank account specified by Supplier. Such payments shall be made within three (3) months and fifteen (15) days after the last day of the month of the bill of landing date.
製品の出荷時に、サプライヤーはディストリビューターに請求書を提出するものとし、ディストリビューターは、各月に発生した請求額を、米国ドルで、サプライヤーが指定する銀行口座に支払うものとする。当該支払いは、請求書の到達した日の属する月の最終日から3ヶ月と15日以内に行うものとする。

引渡し(Delivery)

商品やサービスをサプライヤーから販売店に引渡す際の条件については、売買契約書の基本条件となりますので、販売店契約書の中に書くか、Basic Terms and Conditionとしてまとめて記載するのが簡明です。国際取引では、商品の危険負担、運賃、保険などを、どの段階から、どちらの当事者が負担するのかを定める必要があります。但し、これらの条項を慣例によるとすると、各各自の理解がバラバラになってしまいますので、当事者の理解と異なる結果になってしまうことがあります。インコタームズは国際取引において使用される言葉の意味を国際的に統一しようとするものですので、インコタームズに規定された定義を活用することで当事者間における意思疎通の齟齬を回避することができることになります。

Supplier shall deliver the quantities of Products set forth in each Purchase Order CIF (as defined in Incoterms 2020) at the place specified in such Purchase Order, not later than the required delivery date specified therein. Title to and risk of loss of all Products shall pass to Distributor at the time of delivery.
サプライヤーは、個々の発注書CIF(インコタームズ2020で定義されている)に記載されている数量の製品を、当該発注書で指定された場所において、指定された希望引渡し日までに引き渡すものとする。すべての製品の所有権および紛失の危険は、引渡し時にディストリビューターに移転するものとする。

製品保証(Warranty)

物の売買において最も紛争が生じるのは、製品に欠陥があることです。販売店においては、顧客との間で保証条項を定めたり、保証契約を締結したりすることが通常だと思われます。しかしながら、販売店はメーカーではありませんので、製品の補修や原因の判定が必ずしもできるわけではありません。そこで、販売店に対して顧客からのクレームがあった場合には、販売店はサプライヤーに報告し、最終的にはサプライヤーの支援によってトラブルの解決をしてもらうのが最も好ましいと考えられます。従って、販売店としては、自己が顧客に提供する保証の内容と期間と同じだけの保証をサプライヤーに提供してもらい、顧客からのクレームについてはできる限りサプライヤーに補修をしてもらえるようにしておくことが重要です。サプライヤーに原因究明義務を課したり、調査報告書の写しを提出することを要求することもあります。

Supplier warrants to Distributor that the Products were manufactured in accordance with their written specifications when shipped to Distributor, and that for the first three hundred sixty (360) days after delivery to Distributor the Products shall be free from such material defect as would render the Products unsuitable for use.
サプライヤーは、製品がディストリビューターに出荷された時点で、書面の仕様に従って製造されたこと、およびディストリビューターへ配達されてから360日間、製品が使用できなくなるような重大な欠陥がないことをディストリビューターに保証する。

損害賠償の制限(Limitation of Damage)

サプライヤーの側からすれば、海外において無制限の損害賠償責任を負うリスクを避けるために、損害賠償の範囲に制限を設けたいと考えることがあります。このような制限も公序良俗に反しない限り有効とされます。アメリカでは、当事者の権利を制限する(損害賠償の範囲を限定する)条項については、大文字で分かりやすく規定しないといけないとされていますので、この条項だけが全部大文字で規定されています。損害賠償の範囲については、対象となる製品の種類に基づき、製造物責任やリコールの可能性なども考慮し、どの範囲までどのような制限をかけることができるかを個別に検討する必要があります。実際の取引の中では、商品の欠陥により商品代金を支払うかどうかでもめることが多くありますので、実務上重要な規定になります。

THE WARRANTIES CONTAINED IN SUBSECTION 7.1 ARE IN LIEU OF ALL OTHER WARRANTIES OR CONDITIONS, EXPRESS OR IMPLIED, INCLUDING WITHOUT LIMITATION, THOSE OF MERCHANTABILITY OR FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE. IN NO EVENT SHALL SUPPLIER BE LIABLE FOR DAMAGES, DIRECT OR INDIRECT, INCLUDING LOST PROFITS, INCIDENTAL OR CONSEQUENTIAL DAMAGES SUFFERED BY DISTRIBUTOR OR ANY CUSTOMER, END USER OR OTHER THIRD PARTY ARISING FROM ANY BREACH OF WARRANTY OR BREACH OF CONTRACT, NEGLIGENCE OR ANY OTHER LEGAL GROUND OF ACTION, IN EXCESS OF THE PURCHASE PRICE PAID BY DISTRIBUTOR FOR THE DEFECTIVE PRODUCTS.
7.1条に含まれる保証は、商品適格性または特定目的適合性を含むがこれらに限定されない、明示的または黙示的の他のすべての保証または保証条件に代わるものである。いかなる場合でも、サプライヤーは、欠陥製品により、ディストリビューターまたは顧客、エンドユーザー、またはその他の第三者に対して発生した、直接的または間接的であり、逸失利益や付随的または結果的な損害を含む、保証違反、契約違反、過失または訴訟の法的根拠から生じる損害に対して、ディストリビューターが支払う購入価格を超えた責任を負わないものとする。

販売代理店契約における一般条項

販売代理店契約においても一般条項の規定は重要です。以下、一般条項について見ていきます。

守秘義務(Confidentiality)

販売店契約書の中に秘密保持義務条項が定められることも多くあります。秘密保持契約書を個別に締結している場合は、秘密保持契約書との関係についても明確にしておく必要があります。

The Distributor and the Supplier acknowledge a duty of care and confidentiality to each other. Business information. All business information provided by either party to the other, including but not limited to present or prospective customers, management information reports, contracts, operational methods, plans or strategies, and other business affairs of either party, are and shall be treated as confidential both during and after the Term of this Agreement.
ディストリビューターとサプライヤーは、相互に注意義務と守秘義務を有することを確認する。営業上の情報;現在または将来の顧客、管理情報レポート、契約、運用方法、計画または戦略、およびいずれかの当事者の他のビジネス業務を含むがこれらに限定されない、いずれかの当事者によって提供されるすべての営業上の情報は、本契約の期間中およびその契約期間終了後において、秘密情報として扱われるものとする。

譲渡禁止(No Assignment)

契約上の地位の移転や、契約に基づく権利の譲渡を禁止する条項です。サプライヤーは当該販売店を信用して販売店契約を締結するものであり、ほかの者にその地位が譲渡されるとサプライヤーの目的が達成できないことになります。但し、M&Aがなされた場合や株式の譲渡により経営支配権が移転した場合(チェンジ・オブ・コントロール)をどうするかについて格別に定めることもあります。

Non-Assignable. This Agreement is not assignable, in whole or in part, by Distributor without the prior written consent of Supplier. Any such attempt to assign any of the rights, duties or obligations of this Agreement without such consent shall be null and void.
譲渡禁止;本契約は、サプライヤーによる事前の書面による同意なしに、ディストリビューターが全体的または部分的に譲渡することはできない。かかる同意なしに本契約の権利または義務を譲渡する試みは、無効となる。

拘束力

契約の拘束力の及ぶ範囲を定める通常の規定です。

Binding Effect. This Agreement shall be binding upon the Parties, and their respective employees, agents, representatives, affiliates and successors or assigns.
拘束力;本契約は、両当事者、およびそれぞれの従業員、代理人、代表者、関連会社、承継人または譲受人を拘束するものとする。

完全合意条項

Entire Agreementは完全合意条項ともいわれ、この契約書の内容が従前の協議や合意に取り替わるものであり、契約書の解釈についてこの契約書に記載のない事項を参照することはできないことを定めています。Parol Evidence Rule(パロール・エビデンス・ルール)ともいわれ、口頭での証拠を排除する条項です。

Entire Agreement; Waiver. This Agreement, including Exhibits attached hereto, as amended from time to time, reflects the entire understanding of the Parties. The provisions of this Agreement may not be waived or changed by Distributor except by a writing signed by and evidencing the consent of Supplier thereto.
完全合意、放棄;本契約は、随時修正される本書に添付された別紙を含め、両当事者の完全な了解を反映している。 本契約の条項は、サプライヤーによって署名され、サプライヤーの同意を証明する書面による場合を除き、ディストリビューターが放棄または変更されることはできない。

通知

通知先の住所を記載したり、メールでの通知が有効であることを確認したりすることもあります。

Notices. All notices or other written communications required in this Agreement shall be deemed to have been duly given if delivered personally, by certified mail return receipt requested to the address of the receiving Party set forth below in this Agreement. Notices personally delivered shall be deemed effective upon their receipt; notices sent by mail shall be deemed effective three (3) says after mailing.
通知;本契約で必要とされるすべての通知または書面による意思表示は、直接の手渡しまたは、受取証明付き配達証明郵便によって、本契約において以下に記載する受領当事者の住所に送られるものとする。直接の手渡しによる通知は、受領時に効力を生じ、郵便で送付された通知は、郵送後3営業日後に効力を生じるものとする。

不可抗力

不可抗力条項です。不可抗力の場合は契約を終了させるとするのが多くありますが、最近の契約書では、直ちに契約終了を認めるのではなく、できるだけ契約を終了させないようにするために、不可抗力が継続している期間中は履行を行わなくとも債務不履行にならないとし、単に履行期日を延期させるだけとすることもあります。

Force Majeure. In the event circumstances develop that are beyond the control of the Supplier or Distributor, such as natural catastrophes, war or acts of God that prevent or materially limit a Party’s ability to perform the obligations required by this Agreement, it shall not be cause for termination of this Agreement. The Parties further agree that in the event a force majeure does occur, they will work cooperatively to develop solutions which are mutually beneficial to both Parties.
不可抗力;本契約で義務付けられている義務を遂行する当事者の能力を実質的に制限する自然災害、戦争、または天災などにより、サプライヤーまたはディストリビューターの制御が及ばない状況が発生した場合、本契約の終了原因にはならないものとする。両当事者は、不可抗力が発生した場合には、両当事者にとって相互に有益な解決策を見つけるために協力して取り組むことにさらに同意する。

紛争解決

紛争解決は裁判か仲裁かを決める必要があります。裁判と仲裁を両方記載している場合には、どちらにするかが分かりませんので、紛争解決条項を決めた意味がなくなります。紛争解決地としては、再密接関係地を選択するのが好ましいですが、当事者のいずれかの地を定めることができ、また第三国を紛争解決地とすることもあります。例えば日本と中国との争いの紛争解決地(裁判所ないし仲裁廷)をシンガポールとすることなどです。

Disputes; Arbitration; Attorney’s Fees. All disputes controversies or differences that may arise between the Parties hereto arising out of or relating to or in connection with the terms and conditions of this Agreement or for any alleged breach thereof, shall be settled by arbitration to be conducted in Tokyo, Japan under the Rules of the Japan Commercial Arbitration Association. The Parties hereby agree that any award rendered by the arbitrator shall be final and binding upon the Parties and shall be enforceable in the courts of the countries where each Party maintains its principal office. In the event either Party is required to initiate arbitration or legal action to enforce this Agreement, the prevailing Party shall be entitled to recover its reasonable attorney’s fees and other expenses. In this regard, the normal hourly rate charged by the prevailing Party’s attorney shall be deemed reasonable by the parties.
紛争、仲裁、弁護士報酬;この契約の条項からまたはこの契約の条項に関連して、または契約違反の主張に対して、当事者の間に生ずることがあるすべての紛争、論争または意見の相違は、一般社団法人日本商事仲裁協会の商事仲裁規則に従って、日本国東京において仲裁により解決されるものとする。両当事者は、仲裁人による裁定は最終的なものであり、両当事者を拘束するものであり、各当事者が主たる事務所を置く国の裁判所で執行可能であることに同意する。いずれかの当事者が本契約を履行するために仲裁または法的措置をとる必要がある場合、勝訴当事者は合理的な金額の弁護士費用およびその他の費用を回収する権利を有するものとする。この点に関して、勝訴当事者の弁護士が請求する通常の時間給は、両当事者によって合理的であるとみなされるものとする。

準拠法

紛争解決地(管轄)と準拠法は別の概念ですので、強硬法規に反しない範囲において紛争解決地と異なる法律を準拠法とすることも可能です。準拠法についての記載がない場合にどの国の法律を適用するかは、裁判地の国際司法によって定められることになります。

Governing Law. This Agreement shall be governed by and construed in accordance with the laws of Japan.
準拠法;本契約は、日本法に準拠し、解釈されるものとする。

分離可能性

Severability. In the event any provision of this Agreement shall be held by a proper court of law to be invalid, such invalidity shall not affect the enforceability of the remaining provisions of this Agreement.
分離;本契約のいずれかの規定が無効とされた場合でも、そのことにより本契約の残りの規定の強制可能性は影響を受けない。

見出し

Headings; Captions. The headings, subheadings, and other captions in this Agreement are for convenience and reference only and shall not be used in interpreting, construing, or enforcing any of the provisions of this Agreement.
見出し;本契約の見出し、小見出し、およびその他の見出しは、便宜上および参照のみを目的としており、本契約の条項の解釈、または実施のために使用されない。

言語

Language. This Agreement is in the English language only, which language shall be controlling in all respects, and all versions hereof in any other language shall be for accommodation only and shall not be binding upon the Parties. All communications and notices to be made or given pursuant to this Agreement shall be in the English language.
言語;本契約は英語のみによって記載され、英語があらゆる点で支配的であり、他の言語のすべてのバージョンは便宜的に作成されるだけであり、締約国を拘束するものではない。本契約に基づいて作成または提供されるすべての意思表示および通知は、英語で行われるものとする。

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